名古屋の郷土料理「味噌煮込みうどん」とは?歴史・具材・食べ方など詳しく解説します。
名古屋の郷土料理「味噌煮込みうどん」
名古屋の郷土料理・なごやめし・名古屋のソウルフード…。
様々な呼び名で称される味噌煮込みうどんは発祥地の愛知県だけでなく、周辺の東海地方でもよく食べられる煮込み料理です。
味噌仕立ての煮込みうどんは全国各地にありますが、特に有名なのが愛知の味噌煮込みうどんです。その他の「なごやめし」と同様に、’05年の万博開催の時期に脚光を浴びました。「きしめん」と並んで愛知県の代表的な料理の一つである味噌煮込みうどんを詳しく解説していきます。
味噌煮込みうどんの歴史~元をたどれば山梨の郷土料理ほうとうが関係している?~
現在でも様々な煮込み料理・煮込みうどんが全国各地域に郷土料理として根付いています。
味噌煮込みうどんもその内の一つですが、発祥元は山梨県の郷土料理「ほうとう」と関係しています。
元々、ほうとうは戦国時代に武田信玄公が陣中食として食べていたといわれています。自分の宝刀(ほうとう)で切って食べた説があります。
そんなほうとうが、武田家滅亡後、徳川家に召し抱えられた武田家遺臣によって徳川家に伝えられたものであるという説。そしてもう一つの説が、明治時代、愛知県一宮市周辺で盛んであった繊維産業に従事していた女性従業員達が、ほうとうを参考にうどんと野菜を豆味噌で煮込み食していたものが名古屋市周辺に伝わったという説があります。ほうとうをルーツとする説が中心ですが、そのほかにも諸説あります。
家庭料理であった「味噌煮込みうどん」がお店で売られるようになったのは、明治の初めころに尾張一宮で始まったとされています。
織物工場で働いている人たちの昼食が、それまでの給食ではなく飲食店でとられるように変わっていったことによると思われます。社会のさまざまな変化によって日常の食事がお店で売られるようになり、特別な時の食事になっていったのでしょう。
明治の終わりころには、一宮のうどん屋さんが名古屋へ出向いて「味噌煮込みうどん」の講習会を開きました。これにより売られる地域が広がり、名古屋を中心とした地域でよく食べられるようになりました。
味噌煮込みうどんの特徴
前述で説明した通り、全国には愛知県の味噌煮込みうどん以外にも数多くの煮込みうどん料理が存在します。愛知県の味噌煮込みうどんが、他の煮込みうどん料理と何が違うのかといったところを詳しく説明していきます。
味噌の込みうどん:麺について
味噌煮込み専用麺は通常の麺と違い、小麦粉と水のみ作ります。塩は使いません。
塩を麺に練りこまないのは、味噌の汁に塩が溶け込んで辛くなりすぎるのを防ぐためです。老舗には麺を一般的なうどんとは異なる独特の硬さに煮込んで提供する店舗も多く、味噌煮込みうどんを初めて食べる客から「生煮え」だの「芯が残っている」などと謂れのないクレームを浴びる場合もあります。
麺が固めであることを客に説明する手間を強いられたり、多少柔らかく煮込むことも可能だと提案する店舗もあります。
麺にきしめんを使用したり、美味しさにこだわるために手打ち麺で提供している場合もあります。
名古屋でうどん店に入れば、ほとんどの店舗で味噌煮込みうどんがメニューに並んでいます。店舗によって変わる麺の特徴を楽しむのもおすすめです。
味噌の込みうどん:味噌について
味噌煮込みうどんは、岡崎地方で作られている豆味噌「八丁味噌(はっちょうみそ)」を使うのが基本です。
色は褐色に近く、独特の香りと味が特徴です。お店によって白味噌、みりんなどを加えて味を調整します。愛知の豆味噌は、味噌の元祖とされています。全国でそれぞれの地域を代表する味噌が作られていますが、全国の味噌はこの豆味噌をもとに、他の原料や穀物を加え、熟成期間を短くするなどの改良がされたものといわれています。
味噌は、各地の食に関する特徴や土地柄が強く表れる調味料で、それゆえに地域に根差した味付けといえます。だしには、この地方特有のムロアジの節が多く使われますが、お店によっては鳥ガラを使うこともあります。
味噌煮込みうどん:具材について
用いる具材としては、鶏肉、月見卵、ネギ、シイタケ、蒲鉾などが一般的です。
店にもよりますが、卵の乗せる位置は鍋の中心が比較的多いです。卵は別料金の場合もあります。 ゴボウを入れたり、鶏肉が名古屋コーチンを使っていたり、豆腐を入れたりと差別化を図る店舗もあります。
味噌煮込みうどん:白米をお供に
白米と一緒に食べることも珍しくありません。余った汁に飯を投入して食べたり、米と一緒に炊きおじやとするのもかなり美味しいです。
飯を一緒に食べる習慣は、テレビドラマ『名古屋嫁入り物語』の中で、植木等演ずる主人公が、東京で味噌煮込みうどんを供するうどん屋において、「おおいっ! リャイスがにゃーじゃにゃーきゃ(名古屋弁で「ライスがないじゃないか」)!」と店員に怒鳴るシーンで描写されています。
味噌煮込みうどん:土鍋
味噌煮込みうどんは、ほぼまちがいなく一人用の土鍋で調理されて運ばれてきます。大きな土鍋は、熱が鍋全体に均等に行き渡ることで、粘りのある汁を煮ても焦げつきにくくなっています。
また熱を蓄える作用もあるので、ガスコンロからおろしても長い時間アツアツの状態を保つことができます。熱くて食べるのに時間がかかるので、食べ始めと終わりでは、うどんの芯の抜け方に違いを感じると思います。この変化を楽しむのも味噌煮込みうどんを味わう特徴の一つといえるでしょう。
くれぐれもやけどをしないよう、気を付けて召し上がってください。
味噌煮込みうどんの食べ方
①土鍋の”ふた”を皿代わりに。
お店にもよりますが、味噌煮込みうどんのふたには蒸気抜きの穴が無いのが特徴です。
なのでふたを皿代わりに使って麺を取り分けて食べます。土鍋は熱々ですが、ふたは常温なので安心して手に取ってください。
②焦らずしっかり冷ますこと。
味噌煮込みうどんは、大抵運ばれてきた段階でもグツグツ煮立っています。
皿(鍋蓋)に移すときに雑に持ち上げると、つるつると落ちて汁が飛んで火傷やシャツのしみに繋がります。食べ始めは必ず皿に移してから召し上がってください。
③生卵を割る。
味噌煮込みうどんは、ほとんどの場合、最初から生卵が入っています。
うどんを2/3程度食べ進んだ段階で、生卵を割りましょう。それまで味噌の濃さが際立っていたスープが一転してマイルドになります。
また、生卵を二つ注文するともう一つは白米にかけて食べることもできます。卵が固まる前に白米に乗せ、味噌煮込みのスープをかけるとたまらない美味しさです。
④天ぷらはフニャフニャにしてから食べる。
味噌煮込みうどんには、海老天やかき揚げなどの天ぷらが入っていることが多いです。
これらの天ぷらはカリカリのまま食べるのではなく汁をたっぷり染み込ませて、フニャフニャにして食べるのがオススメです。
新しい食感にはまること間違いなし。
⑤最後は雑炊に。
味噌出汁が余ったら、ライスを頼んで雑炊にしても無礼にはなりません。そのために、最初からライスを注文するお客さんも多いです。この雑炊として食べるのが味噌煮込みうどんの楽しみの一つです。これだけボリューミーなのに、意外と食べれてしまいます。
こちらも味噌煮込みうどん通の食べ方なので是非試してみてください。
名古屋の郷土料理「味噌煮込みうどん」 まとめ
味噌煮込みうどんについていかがでしたでしょうか。
味噌煮込みうどんは愛知特有の赤みそによる濃さがあり、住んでいる地域によっては珍しい味わいの料理だと思います。
冬に食べると体の芯から温まります。それ以外の季節で汗をかきながら食べる人も少なくありません。名古屋へ訪れた際は、是非食べてみてください。